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親の価値観

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どうして中学受験するのか

気らくでだらしのない生活を求める修道者は、いつも落ち着かないだろう。なぜならば、あれもこれも気に入らないだろうから。

イミタチオ・クリスティ』 トマス・ア・ケンピス著 呉茂一・永野藤夫訳 (講談社学術文庫) p.84

いつも「だるい、疲れた」を連発し、字も汚く、式も図もできるだけ書こうとしない生徒がいました。特に字の汚さといったら、「俺は勉強なんかしたくない!」という心の叫びが聞こえてくるような酷さでした。しかし私は、成績が上がれば自信もつけ、態度も変わるだろうと放っておきました。結局、1年たっても態度は変わりませんでした。

(これはもう、腹を割って話し合うしかない。)

そう思った私は、子どもに尋ねました。


「どうして中学受験するの?」

すると子どもは答えました。

「金持ちになって将来楽するため。」

予期せぬ答に椅子からずり落ちそうになるのをこらえ、私は聞きました。

「それ、誰が言っているの?」

子どもは答えました。

「お父さんもお母さんもおじいちゃんもおばあちゃんもみんな言ってる。」

「・・・・・・」。


私はしばらく絶句し、ため息をつきました。この子の親は、自分が、楽>金>勉強、という価値観を子どもに教えていることに気づいているのでしょうか。楽をすることが人生の最大目標である子どもが、一体どうして、自分から図や式を丁寧に書いて勉強するのでしょうか? こんな貧弱な人生観を持たされた子どもが、自分から進んで勉強などするわけがありません。普段から、出来るだけ手を抜こう、楽をしようと思い、だるい、疲れた、と感じていて当然です。

楽なることはない

私は子どもに言いました。

「人生が楽になることはありません。お金持ちにはお金持ちの苦労が、有名人には有名人の苦労があります。どんな人にだって、それぞれ悩みがある。晴れの日ばかりは続きません。晴れの日もあれば雨の日もある。1日の中にだって、楽しい時間もあればつらい時間もある。

年をとったら見た目も衰え、体も弱くなる。能力は若い人に負けるし、今まで楽しかったことも楽しめなくなる。楽になるどころか、つらいことがどんどん増えます。実際、君のお父さん、お母さんは楽になっていますか?」

何を目指すか

「じゃあ、どうしたらいいの?」

子どもは泣きそうになりながら言いました。

「まず、お金持ちになることを、人生の最終目標にしてはいけません。お金持ちになっても幸せになるとは限りません。お金持ちになっても、欲望には限りがないから、もっともっとお金が欲しくなるし、自分のお金が奪われないか、いつもビクビクしないといけない。また、お金持ちになるだけなら、悪い方法がたくさんある。人をだましたり、従業員からお金を巻き上げたり。でも、そういう人は、人から恨まれて、必ず破滅します。

有名になることも、人生の最終目標にしてはいけません。有名になっても、欲望には限りがないから、もっともっと有名になりたくなるし、自分の人気がなくならないか、いつもビクビクしないといけない。また、有名になるだけなら、悪い方法がたくさんある。論文を捏造したり、学歴を詐称したり。でもそういう人は、嘘がバレて、必ず破滅します。」

人に役立つ人になる

「一番いいのは、人に役立つ人になることです。こうすれば、必ず幸せになります。

例えばお殿様でも、自分のことばっかり考えて毎日遊んで暮らしたら、人びとは苦しくなって、国は長続きしません。そうじゃなくて、自分は倹約し、家臣や農民のことを考えるお殿様なら、その国は豊かになり、国中の人も感謝します。今の世の中でも、自分は社長なのに質素な暮らしをし、社員や従業員のためにお金を使う社長さんはいくらでもいます。」

ここまで話したとき、子どもはぱっと顔を明るくして言いました。

「俺、そっちの方がいい!俺、本さえあれば十分やもん!」

最も大切なこと

私はこの返事を聞いて、少々感動しました。この子は、魂を満たしてくれるような高い理想を求めていたんだな、と思いました。

王子てん問いていわく、は何をかこととする。孟子曰く、こころざしたかくす。

孟子(下)』 小林勝人訳注 (岩波文庫) p.361

小学生の高学年から中学生、高校生、大学生と、辛い勉強を続けるには、「高い志」が必要です。楽、お金持ち、有名人、◯◯大学入学、といった目標は、気高い魂を持った子どもにとっては、低俗な目標と言わざるを得ません。


また、こう言った目に見える、表面的で物質的な目標には、必ず、それを得るための邪道が存在します。人を騙したり、受験で言えば、カンニングしたり、国語や算数を捨てて社会で点数を取る、といった方法です。しかし、「人の役に立つ」という正しい最終目標があれば、邪道に陥ることはありません。誠実に、逃げることなく、粛々と、王道を通って勉強を続けるでしょう。

すなわち、教育の秘訣は本来、学生を導いて一方では彼等の仕事(勉強)にたいする愛好心と熟練とを得させ、他方では、適当な時期に、なにか偉大な事柄に生涯をささげる決意をいだかせるように仕向けることだ、と私は思うのである。

幸福論(第一部)』 ヒルティ著 草間平作訳 (岩波文庫) p.39

たえず偉大な思想に生き、ささいなことを顧みないように努めなさい。これは一般的にいって、人生の多くの苦渋と心配事を最もたやすくのり越える道である。

眠られぬ夜のために(第一部)』 ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳 (岩波文庫) p.27

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